2002年1月
●● 番屋の「しょっつる鍋」を紹介しようと思ったけれど… ●●
 2年前、季節ハタハタの大漁に湧く八森町の番屋で、これぞ「漁師のしょっつる鍋!」というのをごちそうになった。10人前は楽に入りそうな大きな鍋に、頭を落としたハタハタをどっさり入れ、「しょっつる」は、もちろん漁師さん自慢の自家製だ。
 「ダシを取ってる時間もねえがら、水にお神酒(みき)っこを入れで、しょっつるで味を付けるだけ。このしょっつるはハタハタだけでこしぇで(造って)、3年以上寝がせたものだ」と漁師さん。そして最後に黒いものを鍋の中にぶち込んだ。
 「これが?今、前の浜から採ってきた岩のりだ。海水をぎゅっとしぼってから、火でさっとあぶる。んだがら香りもいんだ。鍋にして食ってうめのはオスのハタハタだども、汁にうまみを出すためにメスも2割ほど入れる」。鍋の中はハタハタと岩のりだけ。漁師さんだからこそできる、ぜいたくな鍋だ。なんとも絶妙な香りが漂ってきた。
 夜を徹して網起こしや選別作業をこなした漁師さんたちは、朝になって仕事が一段落するとこの鍋を囲む。ドンブリに豪快によそい、横にはコップ酒。飲んで食べた人から番屋の端に敷かれた布団の中に服を着たまま潜り込んで行く。
 さて今回は、ハタハタの大漁で活気づく番屋の様子と、あの「しょっつる鍋」を紹介しようと待ち続けたが、12月7日現在、初漁の知らせはなし。原稿の締め切りも近いということで、ハタハタを待つ番屋の取材になってしまった。すでに布団やストーブなどが運び込まれ、台所には自家製のしょっつるも準備されているが、ハタハタはない。残念だが、イラストもペットボトルに入った「しょっつる」と番屋に設けられた神棚という絵柄になってしまった。
 翌日、初漁の知らせが届いた。自然相手の取材では、こういうこともある。
しょっつる1 しょっつる2



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