2004年 6 月  ●●● 街の鍛冶屋さんが作る「港曳山祭り」のカスガイ ●●●

カスガイ  かつてはどこの村や町にも鍛冶屋さんがあり、トンテンカン、トンテンカンと鎚音を響かせ、包丁やクワ、ナタなど地域の生活に必要なさまざまな金物を作っていたものだ。しかし最近は街の中で鍛冶屋さんを見つけるのは難しくなってしまった。
 「俺が小さい頃は土崎(つちざき)のこの通り(旧道)だけで十数軒の鍛冶屋があったもんだども、今ではうち一軒だけになってしまったな」と少々寂しそうに語る武藤吉廣さん(68)は、創業明治42年創業・正勝刃物鍛冶の4代目だ。
 客の注文に応じて何でも作るという街の鍛冶屋さんだが、「一番、土崎らしいモノといえば、これでねえべが…」と見せてくれたのが秋田市土崎「港曳山祭り(みなとひきやままつり)」の曳山の車輪作りに欠かせないカスガイだった。
 毎年7月20、21日の2日間行われる祭りでは、約20台もの曳山が賑やかに町内にくり出す。ギシギシと車輪をきしませながら進む曳山の上には、ぎょろりとした目の武者人形。とかく曳山を曳く曳子たちの威勢の良さと武者人形に目を奪われがちだが、曳山を支えているのは四つの車輪。武藤さんの作るカスガイはその車輪の強度を保つ重要な役目をになっている。
 「車輪の直径は町内によってなんぼが違うども、幅は全て五寸(約15cm)。大工さんがケヤキ材を組み合わせて作って、それをガッチリ固めるのがこれ。4つの車輪で計128個のカスガイが使われるな」と武藤さん。
 曳山を新調する町内では正月開けから準備に取りかかり、武藤さんは1月中にほとんどのカスガイを打ち終えるという。「まあ1月っていえば大工さんの暇な時でな。その期間に大体の仕事を済ましておくわけだ」
 かなりの重さを支える車輪と心棒の寿命は10年前後とかで、今年も数台の曳山が新調されたという。今回、地域の祭りを支える地元の鍛冶屋や大工など職人さんたちの確かな仕事ぶりを見せてもらった。今年の祭りでは車輪に注目して歩き、「土崎」「正勝」と刻印されたカスガイを探してみたいと思っている。


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