2003年12月  ●●● かわいそう?おいしそう?魚屋の軒先にぶら下がるカモ ●●●

稲架 寒風吹きすさぶ魚屋の軒先に数羽のカモがぶら下がっていた。初めて見る人にとっては、「キャー、かわいそう」と目をそむけたくなる光景かもしれないが、カモ好きの人は思わずツバを飲み込んでしまうに違いない。
 このような光景はかつては県内各地で見ることができたし、山間部の店ではノウサギもぶら下がっていたものだ。しかし最近では、なかなかお目にかかることができなくなった。
 昭和町野村の吉田鮮魚店では、毎年カモ猟が解禁となる11月1日以降になると地元で捕れたカモを販売するという。
 「昔だば、どごの魚屋でもカモを置いであったもんだよ。でも魚屋は少ねぐなるし、カモもいねぐなってきたし…。今ではこうして吊している店も珍しくなってきたべなぁ」と吉田忠勝さん(64)は言う。
 吉田さんは狩猟歴45年のベテラン鉄砲撃ちでもある。「自分で撃ったカモだげを売ればもうかるべども、そうはいがね。最近は捕れねぐなったからなあ。あちこちの鉄砲撃ちに頼んでなんとか仕入れてるんだ」と吉田さんはカモを確保することの難しさを語る。
 実はボクも鉄砲撃ちのはしくれ。吉田さんのおっしゃることはよくわかる。最近は養殖のマガモも出回っているが、味はやっぱり天然ものにはかなわない。「けっこう遠くから買いに来るお客さんもいるな。県外から電話で注文してくるお客さんも多いよ。下ろせない人には下ろしてやるし。うちは魚もカモも下ろすのが上手だから…」と奥さんは愛想もいい。
 「んだ。カモ撃ちの帰りに買って行ぐお客さんもいるなぁ。『今日はカモ鍋だ』って家の人に言って出て来れば、手ぶらでは帰られねべ」と吉田さんは笑う。
 カモの猟期は来年の1月末までだが、最も脂がのっておいしいのは、やはり12月いっぱい。それにしても我ながらいい店を見つけたと思う。カモ撃ちに行って一羽も捕れなくても、ここの店に寄れば大いばりで帰宅できるのだから…。


前年同月
前月 INDEX 翌月
翌年同月

Home