2002年11月  ●● この途38年、アケビ博士の夢は種無しアケビの開発、栽培 ●●

アケビ 県南内陸部生まれのボクは子どもの頃アケビを見つけると中の果肉だけを食べ、当然のように皮は捨てていた。ところが県北の鹿角地方では「中は捨てても、皮は食え」と言われていたらしい。ほろ苦いアケビの皮は大人向きの味とはいえ、鹿角地方には「酢みそ和え」「田楽」「漬け物」などアケビの皮を使った料理が多い。
 鹿角市八幡平字長嶺前田に住む阿部一三さん(68)は、人呼んで「アケビ博士」。昭和39年頃からアケビの栽培に取り組み、同60年頃から本格的な収穫が始まった。「子どもの頃は、みんな夢中になってアケビ採りをして遊んだもんだべ。俺だば、この歳になってもまだアケビに夢中になっているんだがら…」と阿部さんは笑う。
 自宅敷地内の15アールの畑には高さ3メートル程のアーチ型の棚が並び、からみついたツルからは、まさにアケビが鈴なりの状態でぶらさがっている。「毎年2トン位の収穫があるども、今年は夏の長雨が続いて全体的に小ぶり。夏の長雨はアケビの大敵なんだ」と阿部さんは残念がる。それでも山で見かけるアケビよりも、大きさ色ともに数段も上だ。大きいものは長さ約12センチ、重さ270グラム近くのものもある。
 阿部さんはあちこちの山を歩いて理想のアケビを探し出し、持ち帰っては交配を重ねるなどして品種を改良。現在ではワセやオクテなど五種類を栽培をしている。
 「アケビは土の質とその土地の気候で出来が違う。だがら、ここのアケビをよその土地に植えても、小さなものしか出来ねこともある。当然その逆もある」と阿部さんはアケビ栽培の難しさを力説する。収穫は例年9月上旬から10月中旬まで。その場で販売もしているが、首都圏はもちろん、九州や四国方面にも出荷しているという。
 「実はな、今、種無しアケビを研究してるんだ。フフフ…」と阿部さんはうれしそうな表情で教えてくれた。種を気にせず、ほのかな甘みのある果肉を味わうことができるかもしれないとは…。成功を祈ってますよ、阿部さん!


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